田舎の課題を価値あるモノに変えて、みんなにお届け!

時にはしっかり叱ります

●睨み付けながら泣く荻野を見て

こんにちは。村長です。
今日はちょっと昔話をば。

弊社のフルタイムの社員に、4年ほど前に採用した荻野という女性社員が居ました。

荻野は採用面接の際に「大学を留年して半年間休みがあるから、その間にバイトしながら、就職活動を継続したい」と話していました。

個人的には「半年って腰掛け程度で、なんか中途半端な奴やなぁ」と思っていましたが、当時社長だった私の親父が、

「比奈(私の妹)に顔が似とるからこの子を採用や!」

という不純な(いや、清純な?)動機で採用が決まりました。

しかし面接時の受け応えはフワフワしているし、いざ一緒に仕事してみても案の定。ぜんぜん会話にもならんし、信じられないミスを連発するし。

とりあえず半年経てばうちを辞めるのかと思いきや、それまで黒色やった髪の毛が、ある日突如茶髪になっていて。

村長:「お前、その髪で就職活動するつもりか?」

と聞くと、

荻野:「いやー、このままこの会社で働こうと思って。テヘっ。」

という具合です。
面接時には半年だけ、って自分から言うてたのに、誰が期間の延長を認めたのだ・・・

成長意欲はあるらしいけれど、ミスの仕方や、無邪気に自分勝手な行動を取っているところをみると、単純に経験不足に加え、これまでの人生の要所要所で「逃げ」てきているように見受けられました。

そこである日、お客様にご迷惑をおかけするようなミスをした時に、「それではいかん!」と叱ると、

荻野:「もっと優しくしてください!私は褒められて育つタイプなんです!」

と真剣に訴えられました。そういう切り返しは初めてだったので一瞬面食らいましたが、

村長:「なるほど、じゃぁ聞くが、これまで真剣に叱られたことあるんか?」

と問うと、

荻野:「いえ、それはないです。。。」

と。

村長:「本気で叱られたこともないのに、なんで褒められて育つタイプやとわかんねん!お前はただ目の前のことから逃げだしたいだけなんちゃうんかい!就職活動を辞めたんも、現実から逃げただけやろ!」

そう言い返すと、私を睨み付けながら、泣いていました。
「睨み付けながら泣く」という反応、いいですねw (ワタシ、ドエスカモw)
睨み付けるくらいだから内なる闘志みたいなものは持っている。だけど、突き付けられたことが図星で、悔しくて、そして素直だから泣いてしまう。

「就職活動」という目の前のハードルから逃げて、勝手に仕事の継続を決めた荻野。当初はびっくりしましたし、人生ナメてんなぁ、なんて思いました。が、この時流した彼女の悔し涙を見て、「あー、これまできちんと叱られてけーへんかったんやなぁ。一番大事な素直さはあるし、とことんまで付き合うか。」と思い、荻野を一人前に成長させるまで、この会社で育て上げようと決めました、勝手にw

 

●叱るって難しい

社会人1年目で、これまできちんと叱られたこともなく生きてきたことが透けて見えた荻野。今回は立場的にも私が彼女の叱り役になろうと考えました。

私は、「叱る」という行為の主導権は叱られる側にあると思っています。
「叱る」とは、相手の言動が自分や周囲に悪影響を及ぼしそうな場合に、相手に注意やアドバイスを、時には語気を強めながら伝え、是正・改善を促す動作のことだと認識しています。従って、叱る側は相手が是正・改善していくような叱り方に調整しなければなりません。なんて奥深いのよ。。。

似て非なるものが、「怒る」でしょうか。「怒る」は、ただ怒る側が腹を立て、その感情を発散することが主目的で、それによって相手がどうなろうが、知ったこっちゃない。実に浅いもの。

この「叱る」⇔「怒る」の関係性は、「体罰」⇔「暴力」の関係性と似ていて、実は私は受け手に主導権がある「叱る」「体罰」の容認派です。こんなこと言うと周囲からバッシングを受けるかもしれませんが、私は世間一般の「体罰」の解釈が、手を挙げる側に主導権がある「暴力」と混同されてしまっていることが、そもそもの混乱の原因やと思っています。

とまぁ、「体罰」に関しては今回の本題から逸れてしまうので、また機を改めることとして、この「叱る」という行為は、非常に難しい。

そしてこの「叱る」ことは相手の改善を促す目的ゆえに、ある程度の加減を必要とするのと同時に、「フォロー」というものとセットになっていると、とても良い効果が期待できます。ただ、自分で叱って、自分でフォローするという一人二役は、下手したら叱りもフォローも中途半端になってしまうので、それぞれ別の人間で役割分担ができる状態が望ましい、というか、私は一人二役の振る舞いができるほど器用ではありません。

家庭においても、私が子供を叱ると妻がそのフォローをするし、先に妻が叱り出すと、私がそのフォローを行うというのが常でした。

それを社内でやりたかったのですが、フォローの適任人材が見つからなかったため、私の叱り方も中途半端で、フォローも上手にすることができず、荻野はよく「もう会社を辞めたい」と泣いていました。

「まぁその気持ちもわからんくはないなぁ。とりあえず逃げたいもんなぁ。」と思いながらも、私は「会社を辞めたい」と泣いてくる荻野を一蹴していました。

村長:「アホか!お前今この会社を辞めたら、また次の会社でも同じようになんかトラブったら、テキトーに言い訳並べて誰かのせいにして、逃げるように会社を辞めていくだけやろ!そんなもん見えとんねん!」

荻野:「そんなことないです!」

村長:「そんなことあるわ!今じゃない。今はまだ辞めたらアカン!」

そう言って、彼女の退職の意思をひん曲げていました。

そうは言っても、やはりフォロー役が居ればもっとスムーズな対応ができると思ったので、彼女のためにフォロー役をしてくれる外部人材を、彼女のビジネスコーチとしてつけました。そしてそのコーチには、なぜ私が叱るのか、そもそも荻野はどうありたいのか、など、仕事のことも然ることながら、彼女が望む生き方の本質みたいなものまでを引き出すような接し方をしてもらいました。

私の口から言うと反発しそうなことでも、利害関係のないコーチからだと、比較的話は通るもので。

私からは仕事に対する考え方から、接客の仕方、言葉の使い方まで、何より、「目の前の課題から逃げないこと」を意識して、みっちり叩き込みました。

そうして二人三脚で、荻野の育成は進みました。

 

●成長の証

そんなある日、彼女はミスをしました。
人間は必ずミスをする生き物ですから、ミス自体は想定していますし、当時の彼女にとっては日常茶飯事。

ただ、うちの会社は、それはお客様に迷惑かけすぎやろ!というレベルのミスを犯し、頭の中が整理されていないと判断した時には、「業務改善シート」というものを書いてもらいます。

そこには「エラーの内容」「エラーが起きた原因」「エラーを起こさないための業務改善内容」を記入してもらいます。そうして、何がミスの根本にあるのか、どうすれば二度と同じようなミスを繰り返さないのか、を徹底的に考えます。

ただ、頭の中が整理されていない場合はたいてい本質を外した内容が記入されることになります。例えば、遅刻をした場合。

 

◆エラーが起きた原因◆
⇒起きるのが遅れたから

◆エラーを起こさないための業務改善内容◆
⇒始業時間に間に合うように早く起きる

こんな感じです。こんなアホらしい内容ならやめた方がいい。でも最初はうちの会社もこれに似たレベルでした。特に件の荻野はこの類でした。

しかし、その時荻野が書いたシートがこれです。

◆エラーが起きた原因◆
⇒原因はルールを守らなかった私の仕事に対する意識の低さやお客様に対しての気持ちの欠如です。
以前、同じ内容のクレームがあり、それを踏まえて決められたルールがあるのにもかかわらず、ルールを勝手に自分の中で無いものとして、それに疑問も持たず、従来のやり方で作業を進めてしまいました。それは、従来のままでいいだろうという勝手な自分の判断であり、「決められたルールを守る」「同じミスを繰り返さないようにする」という社内での決まりごとに対して意識していれば起こらなかった事です。
また、作業を進めていく上で、どのようにしたらお客様にとって一番いい事かをきちんと考えることが出来ていればクレームが来る事はなかったのに、私が気に留めなかったのはお客様に対する気持ちが欠けていたからだと思います。

◆エラーを起こさないための業務改善内容◆
⇒あるべきルールは必ず守る。同じミスを繰り返さない。相手の事を考える。
今回の件でのしなければならないルールは、お客様から仮注文を受けた際に、備考欄にコメントがなく、お届け頻度の変更のみあった場合はお客様に確認の連絡を必ずすること。
ルールが決められた際は、なぜ、そのルールが決められたのか?ときちんと考えて、ただ作業をするのではなくルールの意味を考えて行動する。また、自分の中のフィルターでルールを認識せず、自分と周りの人との認識がきちんと一致しているかどうか確認をする。そして、周りの人と共通認識できるまで自分が理解できるように聞く。
そして、どのような対応が相手にとって一番良いことかをしっかり考えてから行動に起こす。

ここではどんなエラーの内容だったかまでは記してはいませんし、社内用語も混ざっているので皆さんにはよくわからない点もあろうと思いますが、この時彼女が書いた2項目では、いかに顧客に対して接していくべきかを論理立てて展開しています。そして何より、逃げずに自分の非を認めたうえで改善点を見つけ出し、自分で問題の本質を掴もうとしています。

「ルールが決められた際は、なぜ、そのルールが決められたのか?ときちんと考えて、ただ作業をするのではなくルールの意味を考えて行動する。」

なんていう言葉、最高ですよ。

他人から聞いたことを他人の言葉で羅列することは誰でもできますが、本当に物事を理解した者のみが、きちんと自分の言葉で説明できるようになります。そう考えると、荻野はもう掴んだかな、と。

私は目の上のタンコブのような経営者なので、何度も逃げ出したいと思っただろうし、何度も泣かされてきただろうから、辛い目をしてきたと思うけど、なんか彼女自身の頑張りで、一つ上のステージを勝ち取ったな、と思えました。そして、いつうちの会社を卒業して、どこかへ巣立って行っても恥ずかしくない人材になったとも確信しました。

 

●一つ上のステージへ

そんなことを思った翌週。
壁に耳があって障子に目があったのかと思うようなタイミングで荻野から声をかけられました。

荻野:「ボス(村長のこと)、あのー、実はこの会社を辞めて、大阪でアパレルの接客業に挑戦したいんです。」

村長:「おぉ、そうか!それはええことや!お前はかわいくて明るいから、元々接客業の方が向いてると思うわ。今はきちんと仕事に対して取り組む姿勢もできてるから、行って良し!もう今の俺から学ぶこともそんなに無いやろうしな。」

荻野:「え?いいんですか?以前はアカンって・・・」

村長:「今のお前なら問題ない!大丈夫や!十分学んだやろ。もうどこへ出しても恥ずかしないわ!」

と、驚く荻野に手向けの言葉を畳みかけました。

だって、もう大丈夫ですもん。もちろんまだ若いので経験は浅いですが、仕事に取り組む姿勢や、目の前から逃げないことなど、根本的なことは一人前の社会人になりましたから。それさえあれば新しい職場でも成長できるので。

その時彼女が会社を抜けると、正直言うと職場の業務はぜんぜん回らなかったんですが、そんなことより、荻野が転職して自分のやりたかった仕事に挑戦したい、と前向きに言い出したことが嬉しかったです。前回のような逃げるための転職希望ではなく、完全に次のステップを狙っている目をしてましたから。

 

●その後、やっぱり信頼関係ができてたね

荻野が会社を辞めてから1年半ほど経ったつい先週、彼女から突然連絡が来ました。以下、原文ママ。

荻野:「ボス!お久しぶりです!荻野です(^^)
突然なんですが、私の友人でボスの力を借りたいので紹介して欲しいという子がいるので連絡致しました。友人は丹波市在住で私の同級生です。

~中略~

よければボスの連絡先を教えてもよろしいでしょうか?」

村長:「よう!この1週間で2回ほどお前の話をしてたところやねん。ええ卒業の仕方をしていったやつがおってな、って。そんな話をしてた矢先にこのメッセージやから、びっくりしたわ。で、その友達の件は、承りました。俺にとっても初めてのことやから、どれだけ力になれるかわからんけど、できることはなんでもするわ。俺の連絡先を教えてくれてええよ。」

荻野:「お疲れ様です!そんな短期間に2回も登場させて頂いたなんて光栄です!笑
村の皆様にもよろしくお伝え下さいね(^^)

ボスにそう言って頂けると心強いです!
デリケートな問題なので、私も詳しい事までは分からないんですが。。

早速、友達にも伝えておきますね。
突然の申し出にも関わらず、快諾して下さってありがとうございます!」

村長:「立派な文章を書くようになったなぁ(笑)成長しとる!」

荻野:「ありがとうございます!やっぱりボスに褒められるのが一番嬉しいですね(*^^*)
改めて、ボスに出逢えて良かったな〜と思います。
また、丹波に帰った時はお願いします!」

たぶん、あの時、コーチを雇ってでも私からきちんと叱り、そして彼女も成長が実感できたからこそ、「やっぱりボスに褒められるのが一番嬉しいですね(*^^*)」なんていう言葉が出てくるんだと思います。自分で言うのもなんだけど、そこに愛情があったしね。

もう終身雇用の時代は終わったと言われている中、次から次へと職場を変えていくこと自体に違和感はありません。私だって一度転職したわけだし。

ただし、自分の至らなさを棚に上げて、その職場から逃げるように去っていくのはあまりにもったいなさすぎる。人間なんて一人では生きていけない社会性の強い生き物なんだから、自分が居る職場、自分が居るコミュニティーで、人のために尽くして、信頼関係を築き上げることが何よりも大切だと思うわけです(人によって優先順位が違うだろうけど)。

私の立場からすると、フワフワしてた荻野のことを放置して退職させずに、しっかりと叱りつけたことが、あの職場における最大限の荻野への愛だと思うし、それによって今の信頼関係が築き上げられたんだとも思う。

私は前職では、鬼のように厳しいセンパイに怒鳴られながら仕事をしていたんだけど、必死のパッチでくらいついていったおかげで、それなりに成長できたと思っています。そしてそういう関係は会社を辞めても続くんですよねー。今でも横浜に行く時には、かなりの頻度で出会って、未だによく叱られています(笑)  時折、「お前も成長したなぁ」なんて言われると妙に嬉しかったり。個人的にはそれでええと思うわけです。

よし、近々荻野と飲みに行ってみよっと。

 

●終わりに

行く場所、行く場所に信頼できる仲間を作るのか、行く場所、行く場所に傷を舐め合う残念な仲間を作るのか。それは個々で決めることだから、私には別にどっちでもいいけど、困難から逃げたところで、その困難は形を変えてまたすぐ襲ってくるもんなんですけどね。それに、付き合う人が変われば、人生変わるもんですよ。

今回は荻野がつないでくれたその友達から、悩み事相談とはまた別に、「実はこれから仲間と起業を企んでいるから、起業にあたって今後いろんなことを教えて欲しい!」という依頼もいただきました。地元の後輩たちが、そうやって積極的に動いていることは素晴らしいことだと思うし、オジサンは元気づけられます、マジで!

やっぱりいただいたご縁は大切にせんとなぁ、と感じた2014年、敬老の日。

あ、今日は敬老の日か。この世に生まれてくるご縁をいただいたおばあちゃんに、なんか手料理でも作ってあげよかな。

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